建物の修繕とリフォームのポイント

修繕をしないALCはデメリットしかない

建物修繕を学ぶ 2021.01.05

メンテナンスしないALCがもっとも漏水する

ALC造と言われる建物については”ALC造は存在しない”の記事で説明しましたが、その中でも述べたように、性能面や価格面でとても優れているため鉄骨造(S造)の建物では壁体にALCボードが採用されている割合が非常に多いです。しかし、ALCボードには外壁材として致命的な欠点があることも事実です。主観としても建物の診断や修繕を行っていく中で、漏水の問題が起きている建物の外壁がALCである確率も高いです。では、なぜALCは漏水が起こる可能性が高いにも関わらず多く採用されているのか、致命的な欠点とは何なのか、どのように修繕すべきなのかを見ていきたいと思います。

ALCボードが採用される理由

1.軽量な外壁材である

「軽量気泡コンクリート」と呼ばれるように、ALCは内部に気泡を含むコンクリートです。重さは通常のコンクリートの4分の1程度に抑えることが出来るため、建物への重量負荷を抑えることができ、軽量な分施工性も良くなるためコスト削減にも繋がります。

 

2.断熱性が高い

ALCは壁材の中でも断熱性が高いのが特徴の一つです。コンクリート内部に含まれる気泡の空気層が断熱材の役割を果たすため、熱伝導率は通常のコンクリートの約10分の1と言われています。

 

3.耐火性が高い

材質がコンクリートであるため、火や熱に強く、有害物質が発生しないというメリットがあります。火に弱い鉄骨造や木造で採用されるため、隣家からの延焼を抑える観点からも理にかなっている壁材と言えます。

 

4.遮音性が高い

断熱性と重複する部分ではありますが、コンクリート内部に含まれる気泡の空気層が音を吸収するため、遮音性を高めることが出来ます。防音壁としてALCボードが採用されることもあるほど遮音性が認められています。

ALCの外壁材としての致命的な欠点

1.ALCは水を吸ってしまう

ALCは多孔構造であるため、防水性はなく吸水性があります。またコンクリートはアルカリ性質を持っているため雨などの酸性の水分を吸収してしまうと中性化が起こり、コンクリート自体の耐久性が著しく低下してしまいます。寒冷地などでは吸収した水分が凍ることでひび割れの原因にもなります。

 

2.シーリング材を多用する構造

ALCボードは規格の決まったサイズのボードを貼り合わせるように施工するため、自ずとジョイント(目地)部分が増え、シーリング処理をしなければいけない範囲が広くなります。また、上記の通りALCには吸水性があるため、少しでもシーリングに隙間が生じると水分の侵入口となってしまい、ボードの劣化を促しやすい状況に繋がってしまいます。

ALCボードは使うべきではないのか?

ALCボードの採用理由と欠点を見てきましたが、印象はいかがでしょうか。上記のような説明をするとALCボードは使わない方が良いのではないかと思われる方が多いですが、私はALCボードは壁材として非常に優れているので採用されるべきだと考えています。なぜなら、採用理由からも分かるように、ALCは非常に多くのメリットを持っていますが、デメリットは浸水にはめっぽう弱いという限定的なものになります。そのため、建築時の防水塗装と定期的なメンテナンスを行うことでデメリットは補うことが出来るからです。

まず建築時に関してですが、防水仕上げが施されていないというのはよほどの施工不良でない限りあり得ません。そのような場合には数年と持たずにボード自体がダメになってしまうからです。しかし、メンテナンスに関してはしっかりとした目で修繕時期を見定める必要があります。長くなりましたので続きは”素人でも分かるALCの劣化診断方法”で記述されていただきます。

メンテナンスをしないALCがもっとも漏水する「ALC造と言われるものがなにか」については”ALC造は存在しない”の記事で説明しましたが、その中でも述べたよ…

2021.01.05

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